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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻3号

2000年06月発行

文献概要

特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構

昆虫の免疫関連遺伝子の歴史的多様化

著者: 伊達敦子1

所属機関: 1お茶の水女子大学大学院人間文化研究科

ページ範囲:P.215 - P.220

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 生物にとって,異物を非自己と認識し排除する免疫系は,個体の維持・種の保存に必要不可欠であり,地球上に存在するほぼ全ての生物が免疫系を有していると考えられる。脊椎動物に見られる獲得性免疫は,特異的な自己・非自己の識別,記憶や予見性を持つ機構とその進化過程が非常に特殊かつ巧妙であることが,近年の研究により明らかにされてきた1)。一方で,無脊椎動物の免疫系は,一般的に記憶を持たない非特異的な自然免疫系と理解されるのみである。無脊椎動物の免疫系がどのような遺伝的仕組みによって働いているのか,またそれがどのような歴史的経緯を通して種に獲得されていったかを知ることは,生物の適応進化を議論する上で重要な意味を持ち,その発展として,からだの守り方に関して,脊椎動物と無脊椎動物のもつシステムとの対比を総合的に行うことが可能となる。
 また,無脊椎動物の中でも昆虫類は,旧口動物の頂点に位置し,その種数だけで全動物種の約8割を占め,きわめて多様な環境に適応し繁栄を遂げてきた生物種でもある。彼らが旺盛な繁殖力を持つと同時に,その進化的拘束の中で,最適な「身を守るすべ」を獲得していったとも考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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