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特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
魚卵の受精膜における微生物に対する防御機構
著者: 工藤重治1
所属機関: 1群馬大学医学部解剖学第一講座
ページ範囲:P.221 - P.227
文献購入ページに移動 魚卵に限らず,動物卵の受精膜は物理的には外界との境界を成し,囲卵腔を介して胚が孵化するまで,それを保護する役割を演じていることは容易に理解することができる。また,受精膜は卵膜と異なって非常に強靭で,試験管内実験では孵化酵素以外には簡単に分解されない。一方,自然界では魚卵の受精膜の周囲には多種類のバクテリア,ウイルスおよび真菌が存在し,いろいろな種類の酵素を放出している可能性がある。それらの酵素の中には受精膜を部分的にではあっても,孵化酵素と異なる仕組で分解することができるものがあるかもしれない。孵化酵素でなければ受精膜を分解できないという保証はどこにもないのだから。それにも拘わらず,受精膜は胚が孵化するまで保護しなければならない。上述の環境条件のもとでは,もしも受精膜が積極的に胚を保護しなかったならば,保護膜あるいは防御膜としての役割を胚が孵化するまで維持できないであろう。そのような観点から,受精膜には微生物による感染やその分泌物に対して,積極的に防御する機構が備わっているかもしれないと考えられる。そこで,魚卵の卵膜や受精膜からの抽出物を用いて調べた結果,そのような防御機構が備わっていることが初めて物質のレベルで判明した。
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