特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
マクロファージによる細菌の認識・応答機構
著者:
川崎清史1
西島正弘1
牟田達史2
所属機関:
1国立感染症研究所細胞化学部
2九州大学大学院医学研究院分子細胞生化学分野
ページ範囲:P.234 - P.243
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動物・植物を問わず,病原微生物に対する認識・応答・処理を行う生体防御機構は多細胞生物の出現とともに発生した生命維持に必須の機構である。脊椎動物では,本特集の焦点である自然免疫(innate immunity)に加え,高次の生体防御機構であるT細胞,B細胞を介した適応/獲得免疫(adaptive/acquired immunity)をもつが,体内に侵入した病原菌を最初に認識,応答するのは単球・マクロファージなどの自然免疫担当細胞である。これらの細胞は様々な菌体表層物質によって活性化し,外来抗原を細胞表面に提示するとともに,種々のサイトカイン産生とT細胞活性化の可否を決定する副刺激分子を細胞膜上に発現することにより,適応/獲得免疫の発動を制御している。これまで哺乳動物の生体防御系の研究の焦点は,主にT/B細胞による適応/獲得免疫にあてられてきており,自然免疫系の理解は,その重要性にもかかわらず,著しく立ち遅れていた。一方,近年発見されたToll-like receptor(TLR)ファミリーのうち,いくつかが細菌菌体成分によるマクロファージ活性化に関わることが示され,その分子機構が急速に解明されつつある。