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特集 臓器(組織)とアポトーシス
肝細胞とアポトーシス抵抗性
著者: 佐々木裕1 林紀夫1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学
ページ範囲:P.292 - P.298
文献購入ページに移動 動物細胞は一般に自らを死に至らしめるための機能を遺伝子情報として内蔵しており,そのような機能が活性化されて起こるプログラム細胞死(programmed cell death)は,組織中で不要な細胞あるいは有害な細胞を排除することで正常な発生や恒常性の維持に貢献している。このようなプログラム細胞死の制御異常は癌や神経疾患,自己免疫性疾患などの疾患の発生に結びつき,そのために今日の医学研究においてプログラム細胞死は重要なウエイトを占めるようになった。プログラム細胞死はもともと機能的な概念であり,これに対して1972年にイギリスの病理学者であるKerrらにより提唱されたアポトーシスという概念はあくまで形態学的概念である1)。Horovitzらによって研究されていた線虫のプログラム細胞死2)がたまたまアポトーシスであり,そのkey playerである分子が次々と同定されてcaspase familyがその実行分子であることが明らかになったため,プログラム細胞死=アポトーシスという解釈が広まってきている。しかしながら,アポトーシスの形態を示さずcaspase依存性でないプログラム細胞死も最近発見されており3),プログラム細胞死の分子機構の解明は今後も発展しつづけるものと思われる。
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