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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻4号

2000年08月発行

文献概要

特集 臓器(組織)とアポトーシス

肺上皮細胞におけるアポトーシス

著者: 桑野和善1 原信之1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院附属胸部疾患研究施設

ページ範囲:P.309 - P.313

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 アポトーシスは細胞の増殖・分化,器官の発達・分化に不可欠であり,ホメオスターシスの維持に重要な働きをしている。アポトーシスは肺疾患においても重要であり,その機構の破綻は疾病につながる。アポトーシスの役割の一つは,炎症細胞をはじめとする不必要になった細胞を,有害な代謝産物を細胞外に放出させることなく消退させることである。この機構が破綻すれば,炎症が遷延することになる。実際に,急性肺損傷の正常な修復には,集蔟した炎症細胞や増殖した線維芽細胞がアポトーシスによって,肺胞壁や肺胞腔から除去されることの重要性が報告されている1)。また,逆にアポトーシスが過剰であることが疾病につながることもある。たとえば,急性肺損傷である急性呼吸捉迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)2)や,びまん性肺障害(diffuse alveolar damage;DAD)3),特発性間質性肺炎・肺線維症(idiopathic interstitial pneumonia;IIP・pulmonary fibrosis)4)においては,肺上皮細胞の過剰なアポトーシスが病態と関連していることが報告されている。
 肺損傷においては,その予後を規定する重要な因子は肺上皮細胞や血管内皮細胞の正常な機能の維持と,線維化の抑制と考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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