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特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答
特集に寄せて―何が問題か
著者: 曽我部正博1
所属機関: 1名古屋大学大学院医学研究科細胞生物物理学
ページ範囲:P.522 - P.529
文献購入ページに移動 最近,細胞の機械受容機構がにわかに注目されてきた。しかし生体の機械受容機構は決して新しい課題ではない。聴覚器,前庭器,皮膚機械受容器による意識的機械感覚,あるいは運動器の筋紡錘,腱紡錘,血管や内臓に分布する伸展受容器による無意識的機械感覚の研究はかつて感覚生理学の中心課題の一つであった。ところが,これらの機械感覚器は構造が微細で複雑なためにパッチクランプや分子生物学の適用が難しく,機械刺激を感知するイオンチャネル(機械受容チャネル)の研究は甚だしく遅れてしまった。しかし,このような不利な状況は,筋肉細胞でのパッチクランプによる機械受容チャネルの発見(1984年)以来大きく変化しつつある。つまり,パッチクランプの容易な非感覚細胞で次々と機械受容チャネルが発見され,一気にこの分野の研究人口が増大した。その結果,あらゆる細胞に多様な機械受容チャネルが発現していることがわかり,その生理機能や分子実体の解明に大きな関心が寄せられるようになったのである。
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