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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻6号

2000年12月発行

文献概要

特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答

容積調節現象におけるシグナル伝達初期過程

著者: 小畑秀一1

所属機関: 1横浜市立大学医学部解剖学第1講座

ページ範囲:P.536 - P.542

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 われわれの体は200種類ともいわれる多様な細胞から構成されている。これら細胞には各々その細胞に特徴的な形質が備わるとともに,共通する形質も数多く備わっている。容積調節現象はこの共通する形質の一つである。さて,細胞を低張液(あるいは高張液)に晒すと一旦は膨張(収縮)するものの,細胞外液は低張液(高張液)のままであるにもかかわらず,細胞は元の大きさに復帰する。この現象は「細胞の容積調節現象」と呼ばれ,低張液に晒した場合の反応をregulatory volume decrease(RVD),高張液に晒した場合の反応をregulatory volume increase(RVI)という。本稿では,RVDにおけるシグナル伝達初期過程に関して,筆者らがMDCK細胞(イヌ腎由来の上皮様細胞)を用いて行った実験結果を中心に述べる。容積調節現象の全体像についてはほかの優れた総説1-3)を参照して頂きたい。
 RVDは一体どのような仕組みで起きるのであろうか。筆者らが最も知りたいのは,RVDという現象を引き起こす引き金の実体である。われわれは「細胞膨張と引き続く容積復帰に伴う細胞膜の張り具合,すなわち膜張力の変化がRVDの引き金である」という仮説を立て,この仮説を検証することを目標として実験を行ってきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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