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特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答
機械的ストレスによる心筋肥大の分子機構
著者: 小室一成1
所属機関: 1千葉大学医学部第三内科
ページ範囲:P.567 - P.571
文献購入ページに移動 心筋細胞は,胎児期収縮という高度な機能をすでに果たしながらも活発に分裂増殖を続けているが,出生後間もなく分裂能を喪失する。そのため,心臓の成長は個々の心筋細胞の容積が大きくなるという肥大(生理的肥大)により行われる。高血圧性心疾患,弁膜症,先天性心疾患,肺性心などにおいて,過剰の血行力学的負荷が加わり,生理的肥大の範囲をこえて容積が増加した場合を病的肥大(単に肥大)と呼ぶ。絶えず多大なエネルギーを消費して収縮と弛緩を繰り返す心筋細胞では,骨格筋に比べて遺伝子発現やタンパク質の代謝がもともと大変活発であるが,肥大誘発因子により,タンパク質の合成がさらに亢進し心肥大を形成する。心肥大の形成時に,心筋細胞はタンパク質の合成を亢進させて量的に変化するばかりでなく,形質転換を来たして質的にも適応することもわかっている。例えば,収縮タンパク質のミオシンがエネルギー効率のよいアイソフォームへと変化したり,また利尿作用のあるナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP)の遺伝子発現が増加する1)。
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