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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻6号

2000年12月発行

文献概要

特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答

機械的刺激に対する歯根膜細胞の応答

著者: 安孫子宜光1 清水典佳2

所属機関: 1日本大学松戸歯学部生化学講座 2日本大学歯学部矯正学講座

ページ範囲:P.577 - P.583

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 歯根膜は硬組織である歯槽骨とセメント質に挟まれた線維性の結合組織であり,強固に歯を顎骨の歯槽窩に保持する役割をもつとともに,歯に加わった咬合力や外力を顎骨に直接与えないように緩衝し,また両硬組織が直接擦れ合わないよう,物理的にクッションとしての役割を果たしている。日常の摂食行動での咀嚼時にかかる咬合力,あるいは歯列不正や歯ぎしりなどに起因する機械的刺激が,ある程度歯槽骨に加わっても損傷しないように働いている。
 歯周病の病型の一つとして過剰な咬合力によって引き起こされる咬合性外傷がある。咬合性外傷の病変は歯肉には発症せず,歯根膜,歯槽骨に起こる。高度に病態が進行すると,垂直性の歯槽骨の吸収をきたし歯の動揺を呈し,やがて歯の喪失を引き起こす。一方,歯列不正を矯正する歯科矯正治療の原理は,歯の移動方向に加圧することで圧迫側歯槽骨で骨吸収が起こり,移動と反対側すなわち牽引側では骨の添加が起こることを利用して歯を移動する。咬合性外傷,歯科矯正時のこれらの現象は,周期的伸展力あるいは加圧という機械的刺激が歯根膜組織に加わることで歯根膜細胞から炎症因子,骨吸収因子などが産生されることで説明されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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