解説
新しい情報伝達蛋白質ファミリーの機能
著者:
兼松隆12
竹内弘12
吉村研治12
平田雅人12
所属機関:
1九州大学大学院歯学研究院口腔常態制御学講座口腔細胞工学
2九州大学コラボ・ステーション
ページ範囲:P.608 - P.613
文献購入ページに移動
I.Ins(1,4,5)P3認識蛋白質 細胞内の複雑な情報交換の伝達役の一つに,イノシトール-1,4,5-三リン酸(Ins(1,4,5)P3)がある。この分子は細胞外からの刺激に応答して,細胞膜の構成成分であるホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸(PI(4,5)P2)が,ホスホリパーゼCにより加水分解され細胞質中に向けて遊離されたものである。そして小胞体膜上のIns(1,4,5)P3受容体に到達するとそのチャネルを開き,小胞体内に貯蔵されているCa2+を細胞質中に放出させ様々な細胞機能を発揮する(図1A)。このようなIns(1,4,5)P3の機能が初めて報告されたのは1983年1)であった。Ins(1,4,5)P3誘発性Ca2+放出の分子機構の解明には多くの研究者が参画し,今日目覚ましく進展した細胞内情報伝達研究の推進力の一部となった。
Ins(1,4,5)P3を認識する蛋白質には,当初Ins(1,4,5)P3受容体と2種類のIns(1,4,5)P3代謝酵素(Ins(1,4,5)P33-キナーゼとIns(1,4,5)P35-ホスファターゼ)の合計3種類が知られていた2-4)。