実験講座
複屈折の二次元計測を利用した成長円錐の細胞骨格の可視化―新しい偏光顕微鏡による細胞骨格観察法
著者:
加藤薫1
小椋俊彦1
山田雅弘1
所属機関:
1電子技術総合研究所超分子部
ページ範囲:P.67 - P.74
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複屈折は「分子の並び」が示す光学的性質の一つである。この性質を生きている成長円錐のアクチン束(繊維状アクチンの「ならび」)の観察に応用した。成長円錐の内部のアクチンに基づく構造は,神経伸長の経路探索に重要な役割を果たすといわれる成長円錐の運動を担っている1-3)。しかしながら,生きた状態でのアクチンの観察は難しく,成長円錐の運動の仕組みは議論の対象となっている。そこで,われわれはR. Oldenbourgが開発した新しい偏光顕微鏡(LC pol-scopeまたはnew pol-scope)4)を用いて,アクチンの複屈折を観察することにより,生きている成長円錐内部のアクチン束を無染色で直接観察できる系を作った。そして,それらのアクチン束の動きを直接記録した5)。この映像を解析して,「filopodiaの動き」,「アクチン束の動態」,「アクチン束の形」の関係を明らかにした6,7)。この新しい偏光顕微鏡を用いた観察法は,観察条件が決まれば,容易に再現性のよい結果が得られるのが利点である注1)。この小文では,この新しい偏光顕微鏡を用いた方法と原理について,できるだけ詳しく述べる。