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文献詳細

雑誌文献

生体の科学52巻2号

2001年04月発行

文献概要

特集 情報伝達物質としてのATP

中枢神経系ネットワークとATP

著者: 小泉修一1 井上和秀1

所属機関: 1国立医薬品食品衛生研究所薬理部

ページ範囲:P.101 - P.107

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 各種ATP受容体mRNAおよび受容体蛋白質が脳および脊髄に存在していること,内因性ATPによる脳内シナプス伝達が明らかとなり,今や,中枢神経系情報伝達物質としてATPが機能していることは疑うべきもない。ところがATP受容体特異的作用薬および拮抗薬の開発の遅れやATPの細胞外での素早い代謝・分解が災いして,これらATPにより惹起される応答の脳内責任受容体はもとより,作用機序およびその生理的役割に関してはなかなかその実体に迫れないのが現状である。しかし最近,中枢神経系におけるATP研究は格段に進んだといえる。これは神経細胞そのものの研究というよりは,主にミクログリアおよびアストロサイトなど脳内グリア細胞におけるATP研究が急速に進んだためである。グリアは神経細胞骨格の物理的な支持,栄養因子供給あるいは障害を受けた神経の修復および排除など,主に神経細胞の生存・維持のために重要な役割を演じているが,実際にはそれ以外にもっと積極的にダイナミックな“神経伝達の制御”を行っていることが知られるようになってきた。特にアストロサイトは,液性因子放出により“神経伝達”をダイナミックに調節し得る。本稿では,神経およびグリア細胞を含めた“中枢神経系ネットワークにおける液性情報因子ATP”を切り口として,中枢神経系におけるATPの役割に関する最近の知見を概説する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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