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特集 情報伝達物質としてのATP
ATP受容体と中枢性自律機能制御
著者: 加藤総夫1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学薬理学講座第2
ページ範囲:P.108 - P.115
文献購入ページに移動 ATP受容体を介した細胞間情報伝達に関する知見の多くは,自律神経節後線維と効果器間のシナプス伝達や,副腎髄質・交感神経節後細胞由来の褐色細胞腫系細胞PC12などの末梢自律神経系に関与する細胞群を用いて得られてきた1)。93年以降に進んだATP受容体サブユニット分子のクローニングによって,中枢神経系においてもATP受容体が極めて広範な範囲に発現している事実が明らかにされ,特に,末梢自律神経系の活動を上位から制御し,体内環境の恒常性維持と最適化という使命を担う中枢性の自律機能ならびに呼吸運動制御に関与する下部脳幹諸種神経核の多くがATP受容体を発現することが示された2-5)。
一方,ATPが直接あるいは間接的に中枢神経系のニューロンの活動を修飾する事実は,ATP受容体サブユニット分子のクローニング以前から示されてきた。注目すべきことに,このような細胞外ATPの直接的作用やATP受容体を介したシナプス伝達が証明された脳内構造の多くは,青斑核6-9),孤束核10,11),迷走神経背側核12),あるいは内側手綱核13)など,中枢性の自律機能調節に直接,あるいは間接的に関与する神経核であった。しかもこれらの神経核は,いずれも脳室系に直接接するという共通点を持っており,脳脊髄液中のATP感知という機能からも興味深い。
一方,ATPが直接あるいは間接的に中枢神経系のニューロンの活動を修飾する事実は,ATP受容体サブユニット分子のクローニング以前から示されてきた。注目すべきことに,このような細胞外ATPの直接的作用やATP受容体を介したシナプス伝達が証明された脳内構造の多くは,青斑核6-9),孤束核10,11),迷走神経背側核12),あるいは内側手綱核13)など,中枢性の自律機能調節に直接,あるいは間接的に関与する神経核であった。しかもこれらの神経核は,いずれも脳室系に直接接するという共通点を持っており,脳脊髄液中のATP感知という機能からも興味深い。
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