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特集 情報伝達物質としてのATP
自律神経系:心筋イオンチャネル制御
著者: 松浦博1
所属機関: 1滋賀医科大学生理学第二講座
ページ範囲:P.116 - P.123
文献購入ページに移動 心臓自律神経による心機能の制御には,その神経伝達物質による種々の心筋イオンチャネル活性の修飾が重要な役割を果たしている。近年,中枢神経系および自律神経系の神経終末シナプス小胞には,主たる伝達物質とともに種々のペプチドやヌクレオチドが共存し,神経興奮時にともに放出(co-release)されることが明らかにされてきている1)。例えば,ATPは心臓交感神経終末や副腎髄質細胞のクロム親和性顆粒にノルアドレナリンやアドレナリンと共に含まれていて,神経興奮時に共放出され心機能の調節に関与していることが強く示唆されている2)。加えて,ATPは低酸素,虚血,過伸展などの障害を受けた心筋細胞から放出され,オートクリンもしくはパラクリンとして,すなわち自分自身や近傍の心筋細胞に作用してその膜興奮性に影響を与え,これらの病態に伴う心機能の変化の一端を担っていることも指摘されている3,4)。
1993年以降,多種の細胞膜のATP受容体(P2受容体)の分子構造が明らかにされ,ATP受容体は2ヵ所の膜貫通領域からなるサブユニットで構成されるイオンチャネル型受容体(P2X受容体)と,細胞膜を7回貫通する構造をもちG蛋白と共役する代謝調節型受容体(P2Y受容体)の二つのサブグループに大別されている5)。
1993年以降,多種の細胞膜のATP受容体(P2受容体)の分子構造が明らかにされ,ATP受容体は2ヵ所の膜貫通領域からなるサブユニットで構成されるイオンチャネル型受容体(P2X受容体)と,細胞膜を7回貫通する構造をもちG蛋白と共役する代謝調節型受容体(P2Y受容体)の二つのサブグループに大別されている5)。
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