文献詳細
文献概要
特集 情報伝達物質としてのATP
ATPの血管作用
著者: 多久和陽1
所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科血管分子生理専攻
ページ範囲:P.124 - P.130
文献購入ページに移動 プリンヌクレオチドATPとその関連物質が,細胞外から作用して多彩な生物活性を発揮するというプリン受容体作動物質の概念の確立に与った実験成績は,心臓の抽出物中に含まれるAMPを主体とするアデニンヌクレオチドが心拍数減少などの心作用を持つことを初めて示した約70年前のDruryとSzent-Györgyiの報告1)にさかのぼる。この後,1950年代にはヌクレオチドの降圧作用,血管拡張作用が見出された。このように,ATPを初めとするヌクレオチドの心血管作用は,細胞外ATP作用の中でも最も早い時期に注目された作用である。ヌクレオチドの血管作用は大きく,1)血管拡張,2)血管収縮 3)血小板凝集・止血,4)白血球の遊走・接着の4点にまとめることができる。血管系では細胞外のヌクレオチドの供給源として,1)交感神経末端から神経伝達物質であるノルアドレナリン,ニューロペプチドYとともに放出されるATP,2)ずり応力刺激や低酸素刺激によって血管内皮から放出されるATP, UTP, 3)血小板凝集に際して放出されるADP, ATP, UTP, 4)血漿中のATP, UTP,5)白血球,血管平滑筋から放出されるATP,などが考えられる。
近年の血管生物学の発展により,ヌクレオチドの血管作用の分子基盤の理解は大きく進んだ。
近年の血管生物学の発展により,ヌクレオチドの血管作用の分子基盤の理解は大きく進んだ。
掲載誌情報