文献詳細
特集 情報伝達物質としてのATP
文献概要
痛みは生体にとって非常に重要な警告系としての役割を演じているが,一方で,末期癌や末梢神経変性などに伴う耐え難い痛みは逆に大きな負担となる。病態時の激烈な痛みは患者のQOLを極度に低下させるため,適切なペインコントロールが必要不可欠である。近年,痛みの基礎的研究が急速に進み,疼痛情報伝達および制御における分子機構が次々と明らかにされてきている。その中で最近,痛みの発生伝達機構において新しい役者が登場した。ATPである。ATPは細胞のエネルギー源としてのみならず,神経伝達物質として種々の生理反応に対して重要な役割を担っている。ATPが“痛み物質”であろうという可能性は今からおよそ20年前にヒトで報告されていたが,その疼痛発生機序や生理的意義に関しては長らく不明であった。しかし最近になって,細胞膜上に存在するATP受容体の発見や新規ATP受容体関連薬物の開発,さらにはATP受容体の遺伝子改変動物を用いた解析により,疼痛発現機構におけるATPの非常に特徴的な性質が次々と明らかにされてきている。
そこで本稿では,最近の報告を中心に,末梢から脊髄後角へ痛み情報を伝達する一次求心性知覚神経およびその情報を脳へ伝える脊髄後角神経におけるATPと,その受容体であるP2XおよびP2Y受容体の役割について述べる。
そこで本稿では,最近の報告を中心に,末梢から脊髄後角へ痛み情報を伝達する一次求心性知覚神経およびその情報を脳へ伝える脊髄後角神経におけるATPと,その受容体であるP2XおよびP2Y受容体の役割について述べる。
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