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文献詳細

雑誌文献

生体の科学52巻2号

2001年04月発行

文献概要

特集 情報伝達物質としてのATP

網膜組織形成とATP受容体

著者: 杉岡美保1 山下勝幸1

所属機関: 1奈良県立医科大学生理学第一講座

ページ範囲:P.145 - P.151

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 ATPは成体の神経系で神経伝達物質,神経修飾物質(neuromodulator)として作用することが広く知られている1-3)。一方,発生過程の胚細胞や未分化細胞で,ATPが細胞間情報伝達物質として作用し,細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させるという報告がある4-6)。細胞内カルシウムイオンは細胞増殖7-9),細胞の移動10),細胞分化11)など,発生期の神経組織の形成過程において重要な役割を果たしていることから,ATPに対するカルシウム応答も,神経発生期の細胞に特徴的な生理的応答である可能性がある。特に細胞増殖制御因子としてのATPの作用に関しては,非神経細胞ではすでに知られており12),発生過程の神経系の細胞でも検討が始められている13,14)
 本稿では,神経発生期の網膜神経層を対象として,ATPにより活性化される“カルシウム動員系(calcium mobilization systems)”15,16)(図1),すなわち,Gタンパク共役型受容体の活性化による細胞内カルシウムストアからのカルシウムイオンの放出(カルシウム動員,calcium mobilization),および細胞内カルシウムストアの枯渇により活性化される細胞外からのカルシウムイオンの流入(容量性カルシウム流入,capacitative calcium entry17))について,細胞増殖制御への関与を中心に,最近までに得られた知見を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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