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文献詳細

雑誌文献

生体の科学52巻3号

2001年06月発行

文献概要

特集 脳の発達に関与する分子機構

網膜の発達と分子レベルでの現象

著者: 梶原一人1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター神経再生研究チーム

ページ範囲:P.172 - P.176

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 網膜は中枢神経系の一部として,古くから神経発生の一つのモデルとして研究されてきた。神経網膜は,大きくわけて視細胞,双極細胞,水平細胞,アマクリン細胞,神経節細胞という5種類の神経細胞とミュラー細胞という網膜固有のグリア細胞を形成する。しかしこれは層構造内での位置と形態による非常に大ざっぱな分類であり,実際には同じ種類の神経細胞でも,その形態や大きさ,機能が非常に異なるヘテロな集団と考えられており,これらを細かく分類すると,網膜の神経細胞は50種類とも70種類ともいわれる。また,例えば娘細胞の一方がrod視細胞に,もう一方がミュラー細胞に分化するといった運命は,最終分裂まで決定されていないなど,網膜神経細胞の分化には不明な点が多く,多くの液性因子や細胞外分子の関与が想定されているが,その実態は明らかでない。一方最近,核内転写因子の研究が大きな成果を挙げ始め,各神経細胞への分化の少なくとも必要条件のいくつかが明らかになってきている。紙面の関係から本稿ではこれら転写因子を中心に,網膜のうち特に神経節細胞,双極細胞,視細胞の発達にかかわる分子レベルでの現象に焦点を絞ってこれまでの知見を簡潔にまとめた(図-1,2,3)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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