文献詳細
特集 脳の発達に関与する分子機構
ゼブラフィッシュが開く脳分化・特異化機構研究の新展開―中脳,後脳の部域特異化の分子機構解明のための包括的アプローチ
著者: 岡本仁1 平手良和1 三枝理博1 西脇優子1 田中英臣1 和田浩則1 東島眞一2 政井一郎3
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター発生遺伝子制御研究チーム 2ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校 3科学振興事業団さきがけ研究
ページ範囲:P.216 - P.223
文献概要
われわれは最近,ゼブラフィッシュ胚から分離できるごく少量の組織を用いて,そこに発現する遺伝子群の比較を行ったり,特定の細胞だけで蛍光蛋白(GFP)を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを作る技術を確立した2,3)。またゲノムプロジェクトの発達によって,突然変異を分離・同定した後に,原因遺伝子を探ることも急速に容易になりつつある4,5)。このようなゼブラフィッシュの長所をフルに活用し,中脳から後脳にかけての脳の分化に関わる遺伝子を系統的に同定することが可能になってきている。これまで脊椎動物の脳の部域特異化の研究では,ショウジョウバエの転写因子に類似する転写因子を出発点として,発現解析や機能解析を行うという方法が最も大きな成果をもたらしてきた6-8)。一方で,この方法では特異化の制御因子を知ることはできるが,実際にこれらの因子の下流として機能する実動分子群の実体を明らかにすることは容易ではなかった。
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