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文献詳細

雑誌文献

生体の科学52巻3号

2001年06月発行

文献概要

特集 脳の発達に関与する分子機構

発達脳における神経細胞の移動:新しいニューロン移動法とその原理

著者: 宮田卓樹1 川口綾乃2 岡野栄之3 小川正晴1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター細胞培養技術開発チーム 2大阪大学大学院医学研究科神経機能解剖・眼科 3慶應義塾大学医学部生理学講座

ページ範囲:P.224 - P.229

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 ものが動くには必ず仕掛けがある。ニューロン移動に関する仕掛け,とくに「分子機構」の最新情報をまとめるというのが本稿に与えられた役割である。筆者らは脳皮質形成を分子の言葉で語る突破口を切り開いてきた1)(「リーリン」:先崎博士の稿(200頁)参照)が,皮質の「形成」とは,概念的に分けるならばニューロン産生,移動,組み立てからなり,リーリンが具体的に(狭義の「形成」すなわち「組み立て」に不可欠だ,とかいうおおざっぱな話ではなく)何をしているかという,リーリンの発見以来まったく手付かずのままの問題に挑む上で,ニューロン「移動」とは,見逃せない重要な対象である。
 一般に,鳥が飛べるのは何故かとか,魚はどうやって泳ぐかという質問には,対象の「かたち」の理解なしには解答できない。移動するニューロンの形態については,数十年以上に及ぶ固定標本の,そして最近では培養脳スライスやバラバラにした培養細胞などの観察を通じて,図1に示すようなかたちであると認識されてきた2-4)。周囲の細胞とのひしめき合いの度合いや,移動の活発さに応じて多少の伸び縮みや変形こそあれ,「まる(細胞体)」プラス,進行方向に伸ばした「短い棒(リーディングプロセス)」というのが,われわれが今日「分子」というレベルにまで仕掛けの追求を進められる前提のはずだった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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