特集 脳の発達に関与する分子機構
ニューロン分化に関与する遺伝子
著者:
田賀哲也1
滝沢琢己1
中島欽一1
所属機関:
1熊本大学発生医学研究センター転写制御分野
ページ範囲:P.235 - P.239
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中枢神経系の発生と修復を理解する上で,ニューロン,アストロサイト,オリゴデンドロサイトなど脳を構成する各細胞集団の分化機構の解明は重要な課題である。これらの細胞集団は相互作用しながら脳を形づくるためにそれぞれ特化した役割を担う細胞系譜として分化したものであるが,そのいずれもが神経幹細胞から派生する。多分化能を維持しつつ自己複製能を保持する神経幹細胞からの各細胞系譜への分化の運命付けの決定ならびにその後の分化の進行は,細胞内外の種々の分子によって制御されている。本稿では主としてニューロン分化に関与する転写因子に焦点をあてる。ニューロン分化を正に制御する因子が存在する一方で,ニューロン分化を負に制御する因子の存在も知られており,これらがニューロンとグリア(アストロサイト,オリゴデンドロサイト)の分化の運命付けと分化過程の進行を制御していると考えられる。本稿はこれらの観点から著者らのグループが進めている胎生期マウス終脳神経上皮細胞を用いた分化制御の研究成果を交えながら,ニューロンの分化に関わる転写因子とその役割を考察したい。