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特集 骨格筋研究の新展開
骨格筋特異的カルパインの分子機能
著者: 反町洋之1
所属機関: 1東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻生物機能開発化学研究室
ページ範囲:P.280 - P.286
文献購入ページに移動 カルパイン[E. C. 3. 4. 22. 17, clan CA family C2]は活性にCa2+を要求する中性システインプロテアーゼである1-5)。カルパインは細胞質内に存在して,他の情報伝達因子と直接相互作用し,不可逆的にこれらを制御する細胞内モジュレーターと考えられる。その生理機能は極めて重要であるため,カルパインの活性不全(過剰活性化,不活性化あるいは基質認識変異など)は,筋ジストロフィー症,アルツハイマー病,神経線維腫症など様々な病態を引き起こす。最もよく研究されている,二つのアイソザイム,μ-およびm-カルパインが組織普遍的な発現を示すのと対照的に,一部の器官・組織に特異的に発現が集中するカルパインも存在する。その代表が,本総説で解説する骨格筋特異的カルパイン,「p94」(カルパイン3とも呼ばれる)である。組織普遍的カルパインが細胞の基本的かつ必須な機能を担うのに対し,組織特異的カルパインは発現する組織と密接な機能を果たしていると考えられる。それを裏付けるかのように,p94遺伝子の欠損が肢帯型筋ジストロフィー症2A型(LGMD2A)を発症することが明らかとなっている。以下,まずカルパイン全般について解説した後,p94のユニークな性質を紹介し,LGMD2Aの分子機構とp94の生理機能がどのように関係するかを考察する。
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