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特集 骨格筋研究の新展開
骨格筋細胞の脱分化と分化転換
著者: 遠藤剛1
所属機関: 1千葉大学理学部生物学教室
ページ範囲:P.321 - P.327
文献購入ページに移動 哺乳類では,各組織の最終分化をした細胞は再び分裂することなくその生涯を終えるというのが通説になっている。骨格筋細胞では,未分化の筋芽細胞が融合して多核の筋管細胞を形成することが,最終分化の指標となる。筋管細胞は成熟して,収縮の原動力をになう筋原線維で満たされた筋線維になる。組織の筋管細胞や筋線維だけでなく,初代培養や細胞株の筋管細胞も増殖を停止して細胞周期のG0期に停止している。これらは血清や増殖因子による増殖刺激を与えても再び増殖することはない。しかし培養筋管細胞にSV40large T抗原やアデノウイルスE1Aなどの癌遺伝子を発現させたり,癌抑制遺伝子のRBを欠損させることにより,筋管細胞に細胞周期を再開させ,G1期を経てS期に進行させることができるということが明らかにされた。また少なくともSV40large T抗原の場合には,さらにM期に進行させ,細胞質分裂を引き起こすことが示された。すなわち最終分化をした筋管細胞に脱分化をもたらすことができるということが示されたわけである。この発見により最終分化の概念がくつがえされることになった。
さらに最近,ホメオボックス遺伝子のMsx1を筋管細胞に発現させると,上記の癌遺伝子と同様に脱分化をもたらし,細胞質分裂を引き起こすことが報告された。筋管細胞から分裂した単核の細胞はさらに分裂を繰り返すことが示された。
さらに最近,ホメオボックス遺伝子のMsx1を筋管細胞に発現させると,上記の癌遺伝子と同様に脱分化をもたらし,細胞質分裂を引き起こすことが報告された。筋管細胞から分裂した単核の細胞はさらに分裂を繰り返すことが示された。
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