特集 血液脳関門研究の最近の進歩
脳微小透析法の血液脳関門輸送研究への応用
著者:
出口芳春1
森本一洋1
寺崎哲也2
所属機関:
1北海道薬科大学薬剤学研究室
2東北大学大学院薬学研究科薬物送達学分野
ページ範囲:P.563 - P.570
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脳微小透析法(brain microdialysis法)は,半透膜製の微小透析プローブを脳組織に移植し(図1),脳細胞間液中の神経伝達物質や薬物を経時的に採取する方法として,Ungerstedtらによって開発された1)。脳細胞間液採取法としては,脳室内潅流,コルチカルカップ潅流法などが開発されていたが,広く普及するに至らなかった。その後,Bitoらが“dialysis sac”を脳内に移植する方法を開発し2),その改良型としてDelgadoらは2本のチューブの先端にdialysis sacを取り付けた“dialytrode”を開発した3)。これらが今日の透析プローブの原型となった。以来,25年間に神経化学の研究分野のみならず,神経生理学や薬理学など多くの研究分野に応用されてきた。さらに,近年,ヒトへの臨床応用も検討されており,基礎研究のみならず応用研究まで普及している4)。
末梢組織と異なり,脳には血液脳関門(BBB)が存在し循環血液と脳細胞間液間の非特異的な物質交換は阻まれている。また,血液脳関門の輸送系が働き,促進的あるいは能動的な物質交換が行われることがある。このため,脳組織細胞間液中濃度は血漿中非結合型濃度(血漿中アルブミンなどのタンパクに結合していない濃度)と大きく異なることが多い。