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文献詳細

雑誌文献

生体の科学52巻6号

2001年12月発行

文献概要

解説

血液から脳脊髄液への冬眠特異的タンパク質の能動輸送

著者: 近藤宣昭1

所属機関: 1三菱化学生命科学研究所冬眠制御研究室

ページ範囲:P.597 - P.602

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 冬眠特異的タンパク質(HP)は,哺乳類の冬眠動物であるシマリスの血中に存在している。シマリスでは,冬眠がほぼ1年の周期で規則正しく起こることから,この現象を制御する機構を明らかにする目的で見出された1)。血中のHP量は冬眠に連動して変化することから,冬眠を制御する機構により調節されていることが推測され,その調節系の研究を通して,血液から脳へ輸送されることが明らかにされた2)。血液から脳への物質輸送機構の研究とは全く関連のない分野から得られた成果ではあるが,生体において,末梢器官の機能を制御する脳が,末梢組織をくまなく循環する血液との間に緊密な連絡を持つことは当然のことだし,それゆえ,血液と脳との間に特異な物質輸送経路が存在し調節されていることは容易に想像できる。しかし,現実には,両者の間の物質輸送機構,特に高分子のタンパク質の輸送調節の研究や輸送手段の開発は,ほとんど進んでいない。この分野には門外漢である筆者が,以下に述べる血液脳脊髄液関門を輸送される興味深い複合体タンパク質を見出したのは,関門に限局されることなく,冬眠という特異な生理現象を視点として生体レベルで血液と脳の関係を考察することができたからかもしれない3)。血液と脳を隔てる関門をくぐり抜ける優れた方法を見出すことは,将来の脳研究や脳疾患の治療において,治療薬や検査薬を脳へ自在に運び込むための重要な課題と思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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