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解説
生命を電子で見る―筋肉の細いフィラメント上でのCa2+によるトロポニン・トロポミオシンの変化
著者: 若林健之1
所属機関: 1東京大学理学部物理学教室
ページ範囲:P.603 - P.610
文献購入ページに移動 筋肉はどのように収縮し,弛緩するのであろうか。タンパク質分子はどのようにして,それを実現しているのか。筋収縮は細胞内カルシウムイオン濃度で制御されるが1),それにはトロポミオシンと1965年に江橋らにより発見されたトロポニンがアクチンフィラメントに結合して,筋肉の細いフィラメントと呼ばれるような構成になることが必要である。Ca2+はトロポニンに結合する。その際,どのような変化が筋肉の細いフィラメントに起きるのか,多くの研究グループによって追求されてきた。
最近私たちは,細いフィラメントの上でトロポニンがCa2+によって大きく(~4nm)移動することを見出した2)。トロポミオシンは分子全体として動くとされてきたが,実際には分子のN端側の2/3はほとんど動かず,C端側の1/3だけが移動する意外な事実を立体構造として明らかにした2)。これらの動きにより,モータータンパク質であるミオシンとアクチンとの間の反応過程が妨げられ,弛緩が実現する。
最近私たちは,細いフィラメントの上でトロポニンがCa2+によって大きく(~4nm)移動することを見出した2)。トロポミオシンは分子全体として動くとされてきたが,実際には分子のN端側の2/3はほとんど動かず,C端側の1/3だけが移動する意外な事実を立体構造として明らかにした2)。これらの動きにより,モータータンパク質であるミオシンとアクチンとの間の反応過程が妨げられ,弛緩が実現する。
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