文献詳細
実験講座
文献概要
分子間の相互作用を,FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer,蛍光のエネルギー移動)を使って観たいといって筆者を訪れる人々が少なからずいる。彼らはneurobiology,developmental biology,oncologyなどのバックグラウンドをもち,相当に勉強されている。いわゆるシグナル伝達マップをほぼ完壁に消化し,この分子とこの分子との間の相互作用が,生きた細胞で実際に起こっているかを確かめたいという。こういう相談を受けるたびに思うことがある。矢印の確認のためだけのイメージング技術はつまらないかも,と。先の人々の企図するイメージングが,注目する相互作用の時間的空間的特性についてわれわれの知見の幅を広げてくれることには違いはない。しかし,他の手段を使った実験結果からはまず見当のつかないような事実を明らかにするべきイメージングを目指してはどうか。であるからして,イメージング実験に臨んで遊び心をしのばせてみたい。これしか観ない,追わない,というのではなく,懐を広くして構えてserendipitous discoveryが生まれるよう工夫と努力をしてみる。筆者は,網羅的ないわゆるHigh-Throughputを目指したイメージングを推奨しているのではない。
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