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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻2号

2002年04月発行

特集 RNA

ゼブラフィッシュ発生分化過程に働くRNA情報発現系

著者: 井上邦夫1

所属機関: 1奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科

ページ範囲:P.103 - P.109

文献概要

 RNAレベルの遺伝子発現制御(以下,RNA情報発現制御と呼ぶ)は,スプライシング,ポリA鎖付加やRNA編集,mRNAの輸送・局在化,安定性制御や翻訳効率の制御など多岐にわたる。多細胞生物の発生分化過程には,これらの制御系が重要な役割を果たすと考えられる。例えば,キイロショウジョウバエ(DrosoPhila melanogaster)の雌雄分化過程には,選択的スプライシングによる性決定遺伝子群の発現制御カスケード系が中心的な役割を担っている1)。また,ショウジョウバエの前後軸形成やアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の胚誘導過程には,卵内における母性mRNAの局在化が必須である2)。このような制御系においては,RNA結合性タンパク質やRNAヘリカーゼの働きが不可欠である。
 われわれは,発生分化過程におけるRNA情報発現制御系の役割解明を目指して,主に淡水性小型魚類ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いて解析を進めている。ゼブラフィッシュは,近年,脊椎動物の発生現象を理解するための有効なモデル実験生物として脚光を浴びている。飼育しやすいこと,体外受精で胚体が透明なことから初期発生過程を観察しやすいこと,インジェクションや胚移植が容易なことなどに加え,多産で世代時間が3カ月程度と比較的短く,遺伝学的解析が精力的に進められている点がその大きな理由である3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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