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特集 RNA
極顆粒の構築とミトコンドリアrRNA
著者: 網蔵令子1 小林悟1
所属機関: 1岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター基礎生物学研究所
ページ範囲:P.110 - P.116
文献購入ページに移動 多くの動物において,生殖細胞である卵や精子に分化する細胞(生殖系列)は,発生の初期に決定される。この生殖系列を形成する因子は,生殖質と呼ばれる卵細胞質に局在すると考えられてきた1,2)。ショウジョウバエの生殖質(極細胞質)は,卵の後極に局在している。この極細胞質を取り込むように形成される極細胞と呼ばれる細胞が生殖細胞に分化することのできる唯一の細胞である(図1)。極細胞質中には極顆粒と呼ばれる顆粒が含まれている。われわれは,ミトコンドリアの大サブユニットと小サブユニットのrRNA(mtlr RNAとmtlsRNA)が極顆粒に局在すること,これらのうちmtlrRNAが極細胞の形成に必須なことを以前に報告した3-5)。最近,これらのmtrRNAsがTudorと呼ばれるタンパク質の働きにより,極細胞質中において,ミトコンドリアから極顆粒へと移送され6),極顆粒表面でミトコンドリアタイプのリボソームを形成していることが明らかとなった7)。おそらく,このリボソームにより,極細胞形成に関わるタンパク質が合成されると考えている。本稿では,これらのRNAに関する解析を中心に,極顆粒と生殖系列の形成との関係を概説する。
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