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2001年の始めに,ヒト遺伝子の塩基配列決定はほぼ終了した。これらの情報は新たな生命現象の発見や新しい概念の医薬開発につながることから,今後はそれらの情報に基づく遺伝子の機能解析に研究の重点がシフトしてゆくであろう。では,いわゆるポストゲノム研究として何が求められているか。多くの課題が浮かんでくるが,その一つに三次元構造に依拠したRNAの機能解析が挙げられる。たとえば,リボザイムのようなRNA触媒の作用機構も三次元構造の解析なしでは理解できない。翻訳の過程に関わる主要成分としてのリボソーマルRNA(rRNA),リボソーマルタンパク質,メッセンジャーRNA(mRNA)間の相互作用解析も三次元的視点から評価される必要がある。また,遺伝子制御法の一つであるアンチセンス法も対象mRNAの三次構造の情報を必須とする。最近,大腸菌リボソームの30SサブユニットのX線結晶解析像が報告された1,2)。RNAとタンパク質との相互作用形態の一部が明らかされ,従来のRNAの高次構造に関する知識の見直しが迫られている。今後この方向の研究が加速されるものと思われる。これに対し,mRNAの高次構造に関する情報はほとんど蓄積されていない。その原因として,転写の後にmRNAが細胞質に移行する過程での構造変化,タンパク質の関わり,リボソームとの関わりなどの複雑さが挙げられる。
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