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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻3号

2002年06月発行

文献概要

特集 細胞質分裂

核分裂から細胞質分裂へ

著者: 寺田泰比古1

所属機関: 1ミネソタ大学GCD

ページ範囲:P.209 - P.214

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 細胞周期のM期(分裂期)は,複数の動的な変化が極めて短い時間に順序正しく行われるようにプログラムされた期間である。染色体の凝縮・分離・脱凝縮,核膜の崩壊と再形成,紡錘体形成と細胞質分裂といったM期のプロセスは,数分のオーダーで進行するダイナミックな運動を特徴としている。核分裂と細胞質分裂は密接に制御された関係にあり,もしも,正常な姉妹染色体分配が終了する前に細胞質分裂が始まると,娘細胞の一つは余分な染色体コピーを持ち,他の娘細胞は欠失した異常細胞ができる。これは,発癌や重篤な遺伝子病の原因となり,細胞にはこのような染色体の異数化(aneuploidy)を阻止するための巧妙な「仕掛け」がある1)
 最近になって,クロモゾームパッセンジャー蛋白と呼ばれる蛋白質複合体が,核分裂と細胞質分裂のタイミングを調節する分子である可能性が指摘され,その分子機構が注目されている2,3)。本稿では,クロモゾームパッセンジャー蛋白の役割を中心に,核分裂と細胞質分裂の二つの独立する事象がどのように連携され,遺伝情報が娘細胞へ正確に分配されていくのか,最近の知見を中心に解説する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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