特集 一価イオンチャネル
心臓のATP感受性K+チャネルとその役割
著者:
中谷晴昭1
鈴木将1
植村展子1
佐藤俊明1
三木隆司2
清野進2
所属機関:
1千葉大学大学院医学研究院薬理学分野
2千葉大学大学院医学研究院分子医学分野
ページ範囲:P.285 - P.289
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1950年代から心筋を低酸素状態におくと心筋細胞活動電位が短縮することが知られていた。そのイオン機序として外向き電流の増強と内向き電流の減少という二つの仮説が長い間提唱されていたが,その詳細は不明であった1)。1983年Nomaにより細胞内ATPが減少した時活性化するK+チャネル,すなわちATP感受性K+(KATP)チャネルが心筋細胞に存在することが明らかにされ2),心筋でのKATPチャネルの役割に関する研究が開始された。その後,同様のKATPチャネルが膵臓ランゲルハンス島β細胞3),骨格筋細胞4),神経細胞5),血管平滑筋細胞6)などに存在することが明らかとなるとともに,グリベンクラミド,トルブタミドなどのスルフォニルウレア系糖尿病治療薬がKATPチャネルを抑制すること7,8),クロマカリム,ピナシジル,ニコランジルなどの薬物がKATPチャネルを活性化することが明らかにされた9-11)。
KATPチャネルの分子構造は,1990年代半ばになり清野らのグループにより初めて明らにされた。すなわち,Inagakiらは新しい膜2回貫通型の内向き整流K+チャネル(現在Kir6.1と呼ばれているもの)をクローニングしたが,そのK+チャネルは多くの組織に遍在しているものであり,従来から知られていたKATPチャネルとしての機能は明確には出現しなかった12)。