特集 一価イオンチャネル
生物毒が明らかにするNa+チャネル開閉のメカニズム
著者:
山岡薫1
木下英司1
瀬山一正2
所属機関:
1広島大学大学院医歯薬学総合研究科探索医科学講座
2広島女学院大学生活科学部
ページ範囲:P.304 - P.311
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Na+チャネルのゲート機構に影響する毒物は多種多様であり,与えられたスペースで網羅的に紹介するには限界があり内容が散漫になるので,ここでは主に最近著者らが得た実験結果を中心にして関連する二,三の毒物を紹介し,チャネル機能解析におけるそれらの役割について考察してみたい。主にゲート機構に影響を及ぼす生物毒は,活性化ゲートの電位依存性を変え過分極方向に移動させる群と不活性化過程の機能を取り去る群とに分かれる。まずは前者のグループに属するものについて紹介してみたい。Catterallの分類でsite 2 toxinに属するものでveratridine,aconitine,batrachotoxinとgrayanotoxin(GTX)がある。これらの生物毒は(1)電位感受機構の性質を変え,活性化過程の膜電位依存性を過分極方向に約50mV移動させる。(2)不活性化過程を不動化させる。(3)単一チャネル伝導度を正常の三分の一にする,さらに(4)陽イオン選択性に多少ではあるが影響する。次いで後者のsite 3 toxinを紹介する。サソリ毒(α-scorpion toxin)(LqTX)とイソギンチャク毒(ATXⅡ)が属し,これらの毒は選択的に不活性化過程のみを抑制する。