特集 一価イオンチャネル
脳細動脈平滑筋のクロライドチャネルと細胞間コミュニケーション
著者:
山崎純1
北村憲司1
所属機関:
1福岡歯科大学細胞分子生物学講座分子機能制御学分野
ページ範囲:P.331 - P.336
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哺乳動物の細胞膜には一価陰イオン(Cl-)が通過するチャネル,ポンプや交換輸送体などの経路があるが,Cl-チャネルの重要性については陽イオンチャネルほどにはあきらかになってはいない。血管平滑筋の細胞もその例外ではないが,平滑筋でのCl-チャネルの役割は大きいと推測される1,2)。膜電位変化などの電気現象はイオンチャネルを調べる電気生理学実験によって研究され,血管の収縮性と密に関連していると考えられている。Cl-チャネルが活性化するときには,細胞の膜電位とCl-の平衡電位(細胞内外のイオン濃度によって決定される)の差が駆動力になって膜電位が平衡電位に向かって変化する。血管平滑筋を例に挙げると,一般的に静止膜電位は約-75mVから-50mVであるので,チャネル活性化時にはCl-の平衡電位(-30mVから-50mV)に近づくように電位が変化する。この脱分極は血管平滑筋を収縮させるのに充分なほどであると考えられる(-40mVへの脱分極でも血管収縮が起こると報告されている1))。
これまで血管平滑筋細胞膜のイオンチャネル研究では,一般的に太い血管から酵素で単離した細胞が種々の血管での電気現象の比較の対象になってきた。この種の細胞は電位固定法を使った電気生理学には有用な材料であるといえるが,少なからず多くの問題点を内包している。