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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻5号

2002年10月発行

文献概要

特集 加齢の克服―21世紀の課題 第2部 総説 Ⅰ.自然老化

寿命に関する遺伝子―クロック-1ノックアウトマウスの解析

著者: 中井大輔1 高橋真由美1 本田修二2 野尻英俊1 清水孝彦1 白澤卓二1

所属機関: 1東京都老人総合研究所分子老化 2東京都老人総合研究所老化レドックス制御

ページ範囲:P.394 - P.401

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 1995年にHekimiらが,線虫C. elegansにおいて咽頭ポンピング,スイミング,脱糞などの生体リズム(ウルトラディアンリズム)が遅くなり,寿命が約1.5倍にまで延長する個体群を発見した1)。この線虫の変異を決定づける遺伝子を生体内リズム異常に関わるものとして,クロック遺伝子群(clk)と命名した1)。1997年にはHekimiらによりclk-1遺伝子が同定され,ホモログが酵母からヒトまで生物界に広く存在することを明らかにした2)
 では,なぜclk-1が欠損するとリズムの遅い,長寿の表現型が出現するのであろうか。線虫,酵母S. cerevisiae(ホモログはcoq 7/cat5)の研究から,クロック-1遺伝子(coq 7/clk-1)は生物のエネルギー合成に必要な補酵素ユビキノン(CoQ)を合成するのに必須であることが明らかにされた3-5)。ユビキノン生合成経路の中でもcoq 7/clk-1はデメトオキシユビキノンの3位に水酸基を付加するヒドロキシレース活性の段階に必須である(図1)。合成したユビキノンはミトコンドリアの酸化的リン酸化に必須で,最終的にATP産生をもたらす。この酸化的リン酸化は電子伝達系と共役しており,ユビキノンは電子輸送体である(図2)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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