文献詳細
特集 加齢の克服―21世紀の課題
第2部 総説 Ⅰ.自然老化
老化に伴うドパミン神経の選択的細胞死の機序
著者: 丸山和佳子1 直井信2
所属機関: 1国立療養所中部病院長寿医療研究センター老化機構研究部生化学・代謝研究室 2応用生化学研究所脳科学研究部門
ページ範囲:P.421 - P.424
文献概要
一般に,神経細胞は加齢に従いその数と機能が低下していくと考えられているが,近年の研究では,必ずしも全ての神経細胞が一律に減少,細胞死に陥っているのではないとされている。黒質線条体系に存在するドパミン神経細胞は実験動物においてもヒトにおいても,加齢に従いその数や神経伝達物質であるドパミン量が減少することが確かめられている数少ない神経細胞である1,2)。老化に伴うドパミン神経細胞の選択的細胞死の原因として,酸化ストレスが最も重要な役割を果たしているとされる。
ドパミン神経細胞は,(1)神経伝達物質であるドパミンがモノアミン酸化酵素による酵素的酸化,または非酵素的(自動)酸化をうける過程で,hydrogen peroxide(H2O2),superoxide(O2-)などの活性化酸素種(reactive oxygen species,ROS)を生成する。(2)ドパミン生成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素の活性に必要な鉄イオンが多量に存在する。鉄イオンはROS生成を亢進させる。(3)酸化反応の触媒となるニューロメラニンが存在する。(4)カタラーゼなどの抗酸化酵素活性が低い,などのため高い酸化ストレスに恒常的に曝されている。
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