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特集 加齢の克服―21世紀の課題
第2部 総説 Ⅰ.自然老化
文献概要
加齢・老化に伴う身体機能の低下は生物であるヒトにとってごく日常的な現象である。しかし,その機能低下の程度や発生部位については個体差が極めて大きい。この差異は老化の重要な特徴の一つである。すなわち老化現象は個体差が大きいことから多因子性であることが予想される。個体の発生から発達の過程は明確にプログラム化されており多くの分子が発見され,その発生における機能が明らかにされてきた。これに対して老化のプログラム過程は極めて曖昧で多くの議論がある。しかし確実に加齢とともに臓器障害の頻度は増加する。いい換えれば臓器の予備能は低下する。この事実は老化を構成する重要な要素である。それではどのような要因が老化の成立に関与しているのであろうか。多因子とは考えられるが,老化の成立あるいは抑制に中心的な役割を果たす分子が存在するならば加齢・老化の克服へ可能性が見えるかもしれない。本稿ではわれわれが発見した加齢指標蛋白質SMP30の研究成果を基に上記の可能性について述べたい。
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