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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻5号

2002年10月発行

特集 加齢の克服―21世紀の課題

第2部 総説 Ⅱ.病的老化

アルツハイマー病における神経原線維変化形成と神経細胞死

著者: 高島明彦1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センターアルツハイマー病研究チーム

ページ範囲:P.432 - P.440

文献概要

 アルツハイマー病では老人斑,神経原線維変化,神経細胞の脱落という病理学的特徴がある。これらは,正常老化といわれる脳においても観察されることから,アルツハイマー病の病理は脳老化の終末像であるといわれることもある。アルツハイマー病の成因を理解する上で,家族性アルツハイマー病の原因遺伝子に関する研究から,老人斑の構成要素であるβ-アミロイドの蓄積が主要な原因であるとするアミロイド仮説が提唱され,多くの研究者から支持されている。この仮説では,会合したβ-アミロイド繊維が神経細胞に作用し神経原線維変化と神経細胞死を引き起こすというものである。確かに,神経培養細胞に予め会合させたβ-アミロイドを添加すると神経細胞死とタウ蛋白のリン酸化が起こることが報告されている1,2)
 一方でアミロイド前駆体蛋白(APP)に家族性アルツハイマー病の変異を挿入したトランスジェニックマウスでは,ヒトと同様の老人斑の形成が観察されている3-6)。さらに,いくつかのトランスジェニックマウスではアルツハイマー病の特徴的な行動異常である記憶障害を示したのである。しかしながら,このマウスでは老人斑が出現するにも拘わらず神経原線維変化も神経細胞の脱落も観察されていないのである。この点がアミロイド仮説の大きな弱点となっている。近年,タウの遺伝子異常が家族性の前頭葉側頭葉痴呆症FTDP-17から見出されている7)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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