文献詳細
特集 加齢の克服―21世紀の課題
第2部 総説 Ⅱ.病的老化
文献概要
アルツハイマー病(AD)は高齢者の痴呆の原因として最も頻度の高い神経変性疾患である。その病理学的特徴である老人斑は,アミロイドβ(Aβ)蛋白を主要構成成分としている1)。AβはAPPから連続した二段階の切断を受けて産生される。二段階目の切断はγ切断と呼ばれ,APPの膜貫通ドメイン内で複数の部位で切断が起こることなどから,γ切断を行う酵素(γセクレターゼ)は,既知の通常のプロテアーゼではないものと考えられていた2,3)。しかし家族性AD(Familial AD;FAD)の原因遺伝子として同定されたプレセニリン(Presenilin;PS)1,2の同定とその分子細胞生物学的解析,さらに最近になって報告され始めたγセクレターゼ阻害剤の開発,そして線虫・ショウジョウバエの遺伝学的解析などから,PSが他の蛋白と複合体を形成した巨大な蛋白複合体がγセクレターゼそのものである可能性が強く示唆されている。またAPP以外の基質の同定などから,γセクレターゼがさまざまな生理機能に関与している可能性も示唆されつつある。本稿においては,PSの代謝とその機能,そしてγセクレターゼにかかわる最近の知見をまとめてみたい。
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