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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻5号

2002年10月発行

特集 加齢の克服―21世紀の課題

第2部 総説 Ⅱ.病的老化

ネプリライシン活性制御によるアルツハイマー病の予防と治療の可能性

著者: 高木淑江1 岩田修永1 濱江美1 津吹聡1 西道隆臣1

所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御研究チーム

ページ範囲:P.461 - P.465

文献概要

 アルツハイマー病(AD)は,痴呆を主症状とする進行性の神経変性疾患であり,昨今の少子高齢化に伴い罹患者数は年々増加している。痴呆は患者本人の人間性を崩壊させると共に介護にまわる家族にも多大な負担を強いるため,早急に予防法や治療法を確立することが渇望されている。AD脳の病理所見では,約40アミノ酸残基から成るアミロイドβペプチド(Aβ)を主成分とする老人斑の形成,微小管結合タンパク質タウが高度にリン酸化を受けた結果生じる神経原線維変化などの異常構造物や神経細胞の脱落による脳の萎縮が観察される。これらの病理像の中で老人斑の出現は最も初期に起こる現象であることから,Aβ濃度の上昇および蓄積がADを引き起こす原因になると考えられている。Aβ自体は細胞から定常的に分泌される生理的ペプチドであり,アミロイド前駆体タンパク質(APP)からセクレターゼの作用によって切断を受けて産生するが,通常は速やかに酵素的分解を受けている。このように産生速度と分解速度の適度なバランスによって正常脳にも一定量のAβが存在しているが,産生亢進や分解活性の低下によりこの代謝バランスが崩壊するとAβの蓄積が起こり,AD発症が誘発されると考えられる。したがって,根本的ADの克服のためには脳内Aβを低下させることが必要で,Aβの産生阻害や分解促進がその標的となる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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