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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻5号

2002年10月発行

文献概要

特集 加齢の克服―21世紀の課題 第2部 総説 Ⅱ.病的老化

脳血管性痴呆とNotch3遺伝子

著者: 高橋慶吉1

所属機関: 1国立療養所中部病院長寿医療研究センター

ページ範囲:P.473 - P.477

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 血管性痴呆はわが国における老年期痴呆の二大原因の一つであり,その発症原因として従来,高血圧,高脂血症などの卒中危険因子が注目されてきた。しかし,高血圧,高脂血症の治療・改善の進展にもかかわらず血管性痴呆患者は増加傾向にある。さらに血圧が正常であっても脳梗塞症などにより痴呆を起こす者が相対的に増加してきており,遺伝要因の関与や生活習慣の変化による新規危険因子の出現などを反映した発病形態に変わりつつある。このような背景から脳血管の老化・変性の分子機構,関与する遺伝子や危険因子を解明する研究の重要性が強調されているが,アルツハイマー病に比べ非常に遅れているのが現状である。その原因の一つとして発症原因となる遺伝子が明らかにされてないために,原因遺伝子を用いた発症機序の解明ができない点にある。
 CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)は,1993年Tournier-Lasserveらにより提唱された新しい疾患単位で,中年以降に発症し,再発性脳卒中発作,片頭痛,進行性痴呆と仮性球麻痺などを呈する常染色体優性遺伝様式を示す家族性白質脳症である1)。1996年に本疾患の原因遺伝子として19番染色体短腕(19p 13.1)のNotch3が同定された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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