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特集 加齢の克服―21世紀の課題 第2部 総説 Ⅱ.病的老化
老化の脳神経への関与―脳卒中後の機能回復の脳内メカニズムと老化
著者: 宮井一郎1
所属機関: 1ボバース記念病院
ページ範囲:P.483 - P.489
文献購入ページに移動 いうまでもなく日本の社会の高齢化は急速に進行しており,高齢障害者の主要原因としての脳卒中の医療・福祉分野に対するインパクトはますます高まっている。高齢障害者の自立を促進するために,リハビリテーション(リハ)による介入がなされるが,欧米のstroke unitを主体としたrandomized controlled trialの結果,多角的なリハアプローチは脳卒中患者の日常生活動作や歩行などのdisability(能力障害)を改善,在院日数を短縮し,自宅復帰率を高めることが明らかになっている1)。しかし,その方法論(具体的にどのようなリハを行うか)は経験的な集大成によるところが大きく,機能回復における神経科学的な根拠が必ずしも明らかではない。一方,近年の機能的脳画像や基礎的研究の進歩により,運動麻痺などのimpairment(機能障害)の回復に伴って,脳内の神経ネットワークの再構成が生じることが明らかになってきた。
本稿では,そのような機能回復の脳内メカニズムについて主に運動の側面から解説するとともに,加齢による影響や神経伝達の観点からの機能回復の修飾,とりわけ薬物による機能回復の促進についても考えたい。神経科学的根拠に基づいた再現性のあるリハの方法論を確立し,高齢者の自立度を高めることは,医療・介護分野に対する経済効果の観点からも重要な課題と考えるからである。
本稿では,そのような機能回復の脳内メカニズムについて主に運動の側面から解説するとともに,加齢による影響や神経伝達の観点からの機能回復の修飾,とりわけ薬物による機能回復の促進についても考えたい。神経科学的根拠に基づいた再現性のあるリハの方法論を確立し,高齢者の自立度を高めることは,医療・介護分野に対する経済効果の観点からも重要な課題と考えるからである。
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