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文献詳細

雑誌文献

生体の科学53巻5号

2002年10月発行

文献概要

特集 加齢の克服―21世紀の課題 第2部 総説 Ⅱ.病的老化

老化による骨粗鬆化の分子メカニズム

著者: 川口浩1

所属機関: 1東京大学医学部整形外科

ページ範囲:P.490 - P.496

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 骨は常に骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収を繰り返して再構築を営み続けている組織であり,骨量はこの二つの異なる細胞系列間の機能的平衡状態により維持されている。そこには,カルシウム調節ホルモンなどの全身因子や各種サイトカイン,成長因子などの局所因子による複雑な調節機構が存在している。この調節機構が破綻をきたし,骨吸収が骨形成を相対的に上回ったときに骨粗鬆症をはじめとする骨代謝異常症が発症する。老化は,このアンバランスを引き起こす重要な要因のひとつといえる。
 老年期の骨量は主として以下の三つの要素によって決定される(図1)。第一は青壮年期における最大骨量(peak bone mass)である。最大骨量達成後,女性は一生のうちに皮質骨の35%,海綿骨の50%を失うとされている。男性においてはその三分の二以下の骨量喪失しか起こらないため,骨粗鬆症は女性にとってより重要な問題といえる。この骨量喪失に重要なのが,骨量を決定する第二の要素であるエストロゲン欠乏に起因する閉経後の急激な骨量減少と,第三の要素であるその後の加齢・老化による緩徐な骨量減少である。後者の二つが原因で起こる骨粗鬆症を総称して退行期骨粗鬆症と呼んでいる。さて,これら三つの要因はそれぞれ独立した分子遺伝学的背景を持ち,どのひとつが異常でも老年期で骨粗鬆症となる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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