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特集 ゲノム全解読とポストゲノムの問題点
文献概要
1893年,Lindnerによってアフリカ東部で作られていた酒(pombe)の中から発見された分裂酵母Schizosaccharomyces pombeは1),1950年代になって本格的な遺伝学的研究に利用されるようになる。1987年,Nurseらは分裂酵母のcdc2温度感受性変異株でヒトのcDNAライブラリーを発現させ,cdc2変異を相補するクローンを単離するという当時としては革新的な方法でヒトのCdc2を同定し,真核生物の細胞周期が酵母からヒトまで共通の因子によって制御されていることを示した。その後の細胞周期研究に果たした酵母研究の功績は周知の通りであるが,この20年間,他のさまざまな研究分野においても酵母はその簡便な操作性から主に遺伝学を中心として利用され,複雑な生命現象を解明するためのモデルとして確固とした地位を築き上げてきた。昨年度,ついに出芽酵母に引き続いて分裂酵母の全ゲノムが解読され2),今後のポストゲノム生物学への貢献に期待が高まっている。本稿では,全ゲノムの解読から明らかになった分裂酵母のゲノム構造に触れるとともに,ポストゲノム研究に向かうに当たって,それが抱えている問題点について述べていきたい。
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