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特集 ゲノム全解読とポストゲノムの問題点
文献概要
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の全ゲノム配列が解読されたのは,ヒトゲノムの概要が発表されるほぼ1年前,2000年3月のことである1)。もともと遺伝学の材料であるがゆえに,ゲノム配列解読の効果は覿面である。突然変異体の原因遺伝子をクローニングする過程を犯罪推理小説にたとえてみる。地道な捜査によって少しずつ犯人を追い詰めていたのがゲノム配列決定前の時代だとすれば,容疑者の情報が手元にある状態で捜査を始められるのがポストゲノム時代である。ゲノム配列情報の貢献は個別の遺伝子研究の促進効果にとどまらず,変異体の作製法やマッピング法など汎用性のある新たな方法論の開発にも及んでいる。ポストゲノムの課題が基本的に機能ゲノミクスにあることは自明である。トランスクリプトーム,プロテオーム,インフォマティクスやマイクロアレイなどゲノム時代の方法論をとりいれながら,得意の突然変異体を用いた遺伝子機能解析がますます発展しそうである。本稿では,ショウジョウバエのゲノム配列決定を契機として急速な展開をみせる研究トピックスを紹介しながら,ポストゲノムの課題と展望を議論する。
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