特集 ゲノム全解読とポストゲノムの問題点
ヒトゲノム解読の課題と展望
著者:
清水信義1
所属機関:
1慶應義塾大学医学部分子生物学教室
ページ範囲:P.572 - P.578
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ヒトゲノム解析は,30億の塩基対からなるヒトの設計図・ゲノムを全て解読するという壮大な目標のもとに,国際協力プロジェクトとして1991年に開始され,2003年春のシーケンシング完了というゴールに向かってラストスパートの段階である。この間,1999年12月に,その最初の成果として,われわれは英米3チームとの協力で22番染色体のシーケンシングを完了し,その解読によって545個の遺伝子を含む染色体丸ごとの特徴を初めて報告した(図1)1)。次いで,2000年5月,日独4チームとの協力で21番染色体のシーケンシングも完了2-4),さらに,2001年2月には世界16チームの成果としてヒトゲノム全体の大雑把なシーケンスの解読結果から,約32000個の遺伝子を含む「ヒトゲノムの概要版」5)を公表した。
これらの成果は,ヒトという生物を理解するためのライフサイエンス・基礎医学研究の領域にとどまらず,すでに医療の世界にも大きなインパクトを与えている。特に,疾患の原因遺伝子の究明や発症の分子機構の解明が急速に進展しており,今まさにゲノムの情報や技術を基盤にした新しい医療の黎明期を迎えているといえる。