文献詳細
文献概要
解説
高速原子間力顕微鏡―液中ナノメーター世界の高速撮影
著者: 安藤敏夫1
所属機関: 1金沢大学理学部物理学科
ページ範囲:P.54 - P.60
文献購入ページに移動 タンパク質は時間とともに形態・構造(それと同時に,その周りの場)を変えながら,その特有の機能を個々の分子レベルで発現する。例えば,基質との結合(あるいはそれに続く基質の分解)は最初局所の構造を励起し,それがその後の時間発展するグローバルな変化をドライブし,機能を生じせしめる。すなわち,「構造」と「機能」は密接に関係している。それゆえ,機能する仕組みを理解するには,どのような形態・構造・場の変化が個々のタンパク質分子に起こっているかを知ることは極めて重要であり,様々な技術(電子顕微鏡,蛍光エネルギー移動,蛍光偏光など)を駆使して,その姿を捉えようとする研究が行われている。
しかし,時間とともに変化するタンパク質の姿を捉えることは困難であり,得られる情報はごく限られている。例えば,X線結晶構造解析や電子顕微鏡法は,タンパク質の構造・形態の精緻な情報を与えるが,それがどのように時間発展するかを示すことはできない。他方,光学的な手法は個々のタンパク質分子の時間的変化を間接的に与えることが可能だが,構造情報を持たないか,持つとしても極めて粗いものでしかない。この限界を破る新しい顕微鏡「高速原子間力顕微鏡」をわれわれは世界に先駆けて開発し,水溶液中で個々のタンパク質分子がドラマティックに動く様子を映像として捉えることに,世界で初めて成功した1)。本稿では,原子間力顕微鏡(AFM)の原理,走査速度律速因子について概説したのち,われわれの装置開発とその装置による高速イメージング,および将来の展望について述べる。
しかし,時間とともに変化するタンパク質の姿を捉えることは困難であり,得られる情報はごく限られている。例えば,X線結晶構造解析や電子顕微鏡法は,タンパク質の構造・形態の精緻な情報を与えるが,それがどのように時間発展するかを示すことはできない。他方,光学的な手法は個々のタンパク質分子の時間的変化を間接的に与えることが可能だが,構造情報を持たないか,持つとしても極めて粗いものでしかない。この限界を破る新しい顕微鏡「高速原子間力顕微鏡」をわれわれは世界に先駆けて開発し,水溶液中で個々のタンパク質分子がドラマティックに動く様子を映像として捉えることに,世界で初めて成功した1)。本稿では,原子間力顕微鏡(AFM)の原理,走査速度律速因子について概説したのち,われわれの装置開発とその装置による高速イメージング,および将来の展望について述べる。
参考文献
98:12468-12472, 2001
56:930-933, 1986
64:2454-2456, 1994
69:4111-4113, 1996
817:526-537, 2001
70:4300-4303, 1999
71:2097-2099, 2000
77:2295-2303, 1999
268:333-339, 1992
272:586-590, 2000
掲載誌情報