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文献詳細

雑誌文献

生体の科学54巻2号

2003年04月発行

文献概要

特集 樹状突起

シナプス裏打ち蛋白質のシナプス局在化機構

著者: 神作愛1 畑裕1

所属機関: 1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科病態代謝解析学

ページ範囲:P.104 - P.110

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[1] 分子のシナプス局在決定機構を研究する意味

 神経シナプスは神経伝達の場であると同時に細胞接着の場である。神経シナプスには神経伝達物質放出に関わる分子群と,神経伝達物質を受容する分子群が局在し,さらに,細胞接着構造を形成する分子群が集積している。神経シナプスを他の細胞間結合から際立たせる特徴のひとつに,「神経シナプスはシナプス入力依存的に構造的,機能的に変化する」という現象がある。この現象が,脳における神経回路網の再編をもたらし,その積み重ねの上に記憶学習のような高次機能が成立すると想定されている。したがって,神経シナプスの構造的,機能的変化を分子レベルで解明することが,神経生物学の重要な課題になっている。神経シナプスが神経伝達の場であると同時に細胞接着の場であることに対応して,神経シナプスの変化にも,神経伝達効率の変化と細胞接着の変化の二つの側面があるはずであり,おそらく両者は密接に関係していると考えられる。

 これまでの研究により,神経伝達効率の変化をもたらす分子機構については,多くのことが明らかになっている。とくに最近の大きな成果として,AMPA型グルタミン酸受容体のシナプス膜上の局在を制御する分子機構の解明をあげることができる1)。神経伝達の直接の担い手である受容体の数が変動すれば,神経伝達効率がそれに伴って変化する可能性は容易に想像される。本特集の別の項目に詳述されると思われるが,樹状突起のスパインにも種々の形状があり,例えばAMPA型グルタミン酸受容体が局在しているかどうかによって,形状が変化することが知られている2)。この形状変化は,シナプス活動に依存する細胞骨格の再編の結果かもしれない。すなわち,神経シナプスの変化は,分子レベルでは受容体や細胞骨格などのシナプスを構成する分子のシナプスへの集積状態の変化として捉えることができる。私どもが,シナプスを構成する分子のシナプス局在決定機構に関心をもっているのも,そのためである。とくに,私どもは,シナプスの分子構造の変化を,シナプス入力のみならず細胞接着の側面からも明らかにしたいと考えている。つまり,シナプス入力に依存して細胞接着が変化するか,細胞接着の変化に依存してシナプス入力の効率が変化するか,そしてそのときにシナプスの分子構造にどのような変化が生じているのかという問題を設定している。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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