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文献概要
特集 樹状突起
樹状突起mRNAの局在化,翻訳制御機構
著者: 松岡洋祐1 米田悦啓1
所属機関: 1大阪大学大学院生命機能研究科
ページ範囲:P.111 - P.117
文献購入ページに移動 学習,記憶といった高次脳機能に蛋白質合成が必要であることは古くから知られていたが,近年になってアメフラシの培養神経細胞やラット海馬スライスを用いたシナプス可塑性を検討するin vitro モデルシステムにおいて,樹状突起での局所的蛋白質合成がシナプス可塑性発現に必要であることが示された1,2)。さらには2002年にカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼⅡのαサブユニット(CaMKⅡα)の樹状突起での翻訳を阻害したマウスを作製した結果,記憶障害を持つことが示され3),in vivo 系で初めて脳機能における局所的蛋白質合成の重要性が示された。樹状突起における局所的蛋白質合成の研究は1982年のStewardらによる樹状突起の棘突起(スパイン)基部でのポリソーム発見が端緒となっている4)。この発見により,細胞体とは独立に樹状突起でも蛋白質合成が行われている可能性が示唆された。その後,ある種のmRNAは細胞体のみならず樹状突起にも局在化すること5),小胞体,ゴルジ装置が形態学的にも機能的にも樹状突起中に存在し,実際に細胞体から単離された樹状突起において蛋白質合成とそれに続く糖鎖付加が行われ得ることが示され6),樹状突起が細胞体から独立した蛋白質合成コンパートメントとして機能することが示された。このような研究の流れにのって,現在では樹状突起での局所的蛋白質合成の分子機構と,その前提となるmRNAの局在化機構についての研究が盛んに行われている7)。本稿では最近の知見を中心に,現在までに得られている成果を概説する。
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掲載誌情報