特集 樹状突起
樹状突起機能の2光子励起ケイジドグルタミン酸法を用いた解析
著者:
河西春郎1
松崎政紀1
野口潤1
安松信明1
所属機関:
1岡崎国立共同研究機構生理学研究所生体膜部門
ページ範囲:P.125 - P.129
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大脳皮質の錐体細胞ではグルタミン酸作動性入力の90%が樹状突起のスパインに入力する。スパインの形は変化に富み,頭部が大きく発達した太いスパインと,頭部の小さい細いスパインに大別される(図1a)。この多形性に関して,D. Purpuraらは,精神遅滞児においてスパインの形成異常(spine dysgenesis)が一般に見られ,細いスパインが圧倒的に多いことを報告した(図1b)1)。このスパインの形と機能については長らく議論があり,たとえばF. Crickはスパインのネックが短くなれば(spine twitch)電気的結合が増し,シナプス結合が強くなり,そのような過程が記憶と関係する可能性を推論したことは有名である2)。スパイン機能は2光子励起法(図2a)が登場してから,著しく解析が進むようになった。2光子励起法では近赤外光を用いるために臓器の深部で断層画像が得られる(図2b)。この方法論を用いた研究により,スパインネックは,Crickの説で仮定されているような電気的な遮蔽よりも,たとえばカルシウムイオンなどの代謝的な因子を遮蔽し,スパイン機能を個別に調節しやすいようにするとする実験結果が示された3)。また,自然刺激あるいはテタヌス刺激でスパインの形態変化が誘発されること4),さらに,太いスパインはin vivoで1ヵ月以上安定であることもマウスでわかってきた5,6)。しかし,これらの研究では,スパイン形態と機能との関係は明らかにされていない。